「ラジオはお耳のお供」というように、なにかの作業をしながらラジオを聴くというのはラジオ活用法の王道だと思います。
例にもれず私も仕事や勉強をするときにはラジオをつけます。
いえ、正直にいえば最近は起きてすぐラジオをつけて、ほぼ一日ラジオが流れているという状況で、もっぱら生活に欠かせないものになっています。
昔はFM一択でしたが、3、4年前からAMラジオの魅力をしみじみ感じています。
聴きたい番組がある時はFMにチューニングしますが、なんとなく流しているのはAMが多いです。
安住紳一郎の「日曜天国」
AMラジオの中でもTBSラジオを贔屓にしております。
TBSといえばテレビはもちろん、ラジオでもブイブイ言わせているのが安住紳一郎氏です。
同い年の1973年生まれでもあり、話術の天才、人たらし、異例の出世街道を独壇場で疾走するTBS役員(待遇)。
これだけのスペックでもお腹いっぱいなのに、私好みの三白眼。
見ていて、聴いていて飽きないという特殊能力の保持者であります。
安住氏の才能、もしくは本性(ブラック安住)を真に感じる番組といえば『安住紳一郎の日曜天国』(毎週日曜日午前10時から)
時に、齢50でも精神が未熟な私は落ち込むことも多く、恥ずかしながら枕を涙で濡らすこともしばしば。
そんな落ち込みというピンチに有用なカンフル剤(笑い)として、日天は欠かせないライフハックなのです。
なかでも「生島ヒロシ伝説」回には幾度救われたかわかりません。(youtubeの貼り付けできなかったのでリンクです)
1:30からお茶を吹き出すこと請け合い。油断は禁物です。いいですか、油断禁物ですよ。
生島さんの自然主義が繰り出すおもしろをベースとして、それを伝える安住氏の話術。
2つが掛け合わさった時の爆発的笑いの瞬発力は、もはやバイオレントかつエクセレントなのです。
こうした笑いを提供する回もあれば、涙もろい安住氏は結構な確率で涙する回があります。
リスナーからのお便りを読みながら、しゃくりあげて泣いてしまうという安住氏の人柄に触れられるのも日天の魅力だと思っています。
かと思えば、愚痴る、妬む、嫉む、といったブラック安住がときおり降臨するのもグッとくるポイントです。
その上さらに「ガチのおたく気質」という極上のスパイスまで兼ね備えています。もう、あっぱれです。
自分の汗から塩をつくるという狂気の回「俺の塩」です。
豊富な知識に下支えされた人並外れた好奇心と探究心。
これもリスナーを楽しませるという一点に焦点を当てたものだと思うと頭が下がります。
出世するのも納得だわ。
パートナーの中澤さんの屈託のない笑い声と、二人のテンポの良いやりとりも番組の特徴です。
TBSの社長になっても日天だけは続けてね、安住くん。
松本隆の「風街ラヂオ」
「風街」と聞けば松本隆先生です。
スタイリッシュでアンニュイな情緒。
都会の空気を纏った元祖シティボーイ。
そんな憧れが詰まった松本先生の描く詩の世界は、70年代生まれはもとより、80年代生まれも、90年代生まれも、老いも若きももれなくDNAに染み入るレベルで「風街」のエッセンスは染み込んでいるはずです。
ピンと来なくても松本先生の手掛けた詩をなぞらえば、ご理解いただけるでしょう。
そんな松本先生のラヂオが2024年4月よりTBSラジオでスタートしました。
まず、松本先生の淡々とした柔らかいお声を聴けることに腰が砕けそうです。
松本先生の声は集中して聞くシチュエーションが適しているかと存じますので、ラヂオではありますが音の出どころに全集中して聴くことをお勧めします。
この回のゲストは曽我部恵一さん。
松本先生がリラックスして楽しそうなのも、曽我部くんが緊張しつつも嬉しいのだろうなと想像できるのも、ラヂオであってラヂオでないような、たまたま居合わせた喫茶店の隣の席での会話に似た雰囲気がある。
はじまって間もないのに、このおだやかな空気感はなんだろうか。
松本先生とゲストを繋ぐ竹内香苗さんの存在も大きいと思う。
松本先生のテンポに合っている気がする。
それにしても、憧れていた松本先生に「この人と話しているの好きなんで」なんて気に入られたら、曽我部くん嬉しいだろうなぁと。
松本先生の詩や、はっぴいえんどとの出会いも、なんだか手に取るようにわかる謎の同世代シンパシー。
始まって間もないこのプログラムが、今後の私のルーティンに幅を利かすことは確実で、「学びたい」「知りたい」「刺激を受けたい」という欲求を満たしてくれることは、ほぼ確定だと思っています。
ずっと長く続いてほしいプログラムです。
臼井ミトンの「金曜ボイスログ」
私の個人的な感想ですが、「金曜ボイスログ」が素晴らしいのは、これだけマニアックな選曲やテーマで構成しても金曜8:30 – 14:00の5時間半の放送枠を確保している点にあると思っています。
まず何といっても5時間半という長時間の放送を一定のリズムでこなすミトンさんのアスリート力が、ただただ凄すぎる。
しかもそれを毎週こなすなんて、どうなっちゃってんだよ、と私の中の岡村ちゃんが育ってしまいます。
ミトンさんのジェームス・テイラーびいきが過ぎるのも、それを煽る音楽ジャーナリスト高橋芳朗さんの存在も、この番組の魅力を語る上で欠かせないトピックです。
お二人のマニアックな音楽論議の掛け合いも知識も、私はとても関心をもって聴いていますが、はたしてトラックドライバーや仕込み中の料理人が、このマニアックすぎる番組を好んで聴くのかと不思議なんですが、2023年10月から1時間拡大して現在の5時間半放送となったことを考えると、私の未熟な考えとは裏腹にマニアックなDIGりの需要が大きいということが分かります。
これは歓迎すべき事象ですね。
しかもこれがFMでなくてAMで展開されているところにも注目で、リスナーの意識や環境が10~20年前とは変わってきている証拠なのではないでしょうか。
AMの心地よさを知ったベビーブーム世代がFMから流れてきているのではないかと感じています。
ちなみに73年生まれは210万人もいますからね、その近辺の年代がなびくと大きな力が動きそうですよね。
マニアックなテーマだけどスッと入ってくるのはミトンさんの語り口調が耳馴染みが良く、自然と耳を傾けてしまうところにあるような気がします。
そして、圧倒的な知識をラジオ越しに享受しているという感覚が生まれるところにも、ありがたみを感じて聴き入るポイントなのではないかと。
そこに高橋芳朗さんが加わったとき、わちゃわちゃ楽しそうなおじさんトークがスパークするのもたまらないのです。(お二人のディズニーレポは神回でした)
ミトンさんにおかれましては、毎週の長時間大変かと思いますが長く続いてほしい番組です。
私の父は料理人だったので、AMラジオの背景で父が仕事をしているというのが古い記憶にあります。
「AMじゃなくてFMを聴くセンスでいてほしいゼ」と思春期の私は思っていましたが、遺伝子は文字通り伝わるもので、私もAMラジオの魅力にハマっています。
大沢悠里のゆうゆうワイドだって、今やってたら絶対ハマっていたと思います。
耳に入る情報だけで魅了するというのはTVの世界よりも難しいのではないかと思うと、その職人気質にさらに魅かれてしまいます。
ラジオCMの音楽、例えば「家具は村内 八王子~」とか「はちみつの天狗屋~」とか「スジャータの時報」とか、キャッチ―で秀逸なショート素材が溢れるラジオの世界は、普遍的でありノスタルジーな世界も持ち合わせた特殊な音の世界なのだと気づくのです。
今回はTBSラジオで3つ挙げましたが、他にもたくさん好きなプログラムはあります。
FMもお気に入りの番組はエアチェック(古い?)しています。
情報過多で取捨選択が詳細にできる時代ですが、ラジオというメディアが消滅することは、きっとないだろうと改めて実感する2024年なのであります。