天才・いまみちともたか と ジョニー・マー

MUSIC

TVから流れた三ツ矢フルーツのCMソング。
「雷に打たれる衝撃」というのがふさわしい出会いで、
居ても立っても居られなくて反射的にレコード屋に走った。
7インチの『女ぎつねOn the Run』を「は行」で見つけた時、
宝物を見つけたみたいにドキドキしてときめいたのを覚えている。

モノクロのメンバーと赤い文字のシンプルなジャケット。
媚びてない感じに堪らなく痺れた。
これがBARBEE BOYSとの出会い。
今から37年も前の1987年のことです。

このCMに心奪われた13歳のわたし。

7インチレコードの後、自分のお金ではじめて買ったCDもBARBEE BOYSの1stアルバムだったので
その後、千枚以上をコレクションする音楽メディア収集の突破口を開いたバンドがBARBEE BOYSと言えます。

BARBEE BOYSといえばコンタと杏子さんのボーカルの掛け合いが特徴ですが
ほとんどの楽曲を作詞作曲している天才ギタリストこそ肝心要の重要人物。
鉄腕アトムのお茶の水博士、アラレちゃんの則巻千兵衛博士、そしてBARBEE BOYSにおいては
いまみちともたか こそ肝心要だと私は思うのです。

ギタープレイヤーとして最高にかっこよくて、高身長でフォトジェニックな上に
BARBEE BOYS最大の特徴である、男女の駆け引きの詩の世界と
ソリッドでキャッチ―な楽曲をほぼ一手に引き受けているのがイマサ。
一種の”発明”のような曲を生み出してくれたことに尊敬と感謝しかない。

当時は12インチでしか聴けなかったはず。繰り返し聴きまくった名曲。東京事変のカバーも有名。

一方、洋楽への目覚めは比較的遅かった私。
日本語の持つ詩の世界へのプライオリティが高かったせいで
詩の世界に入り込めない洋楽に英語コンプレックスとともに少々拒否反応を示しつつありました。

そんな17歳の私が出会ったのがThe Smiths。(この頃には解散していたので後追い)
英語がわからなくても伝わる陰鬱とした、ひねくれた世界観。
おまけにジャケットアートのブレない一貫性の中に垣間見える投げやり感。
ここから私のイギリスかぶれが始まるのですが、出会いのニュアンスはBARBEE BOYSに似たもので、
このころになるとドキドキというよりニヤリとできるものを探していた中で、洋楽への突破口を開いたのがThe Smithsだったのです。

その時代に耳に入るベストヒット的な洋楽の類とは一種異なるメロディーラインとモリッシーの歌声。
あまのじゃく科に属する者は、この網に引っかからずにはいられない。
言ってみればこの「陰」の世界に一筋の光を注ぐのが彼の役目。
The Beatlesがレノン&マッカートニーなら80年代のイギリスはモリッシー&マー。
そのくらいThe Smithsのギタリスト・ジョニー・マーの存在が大きく輝いたイギリスの音楽シーン。

私がThe Smithsを好きになった原因はイマサのギターにあるのだと思う。
これはソースがないので私の想像でしかないけれど、イマサとジョニー・マーには親和性があると思っている。
イマサのギターで育った私はジョニー・マーのギターに
「異国に住む親戚のお兄ちゃんに出会ったような親しみ」を覚えた。

同じくイギリスのバンド、POLICEのアンディ・サマーズや、U2のエッジも親戚のお兄ちゃん感があります。

イマサのギターDNAはイギリスの血が多いと思うんだけど、実際どうなんだろう。
ほぼアメリカです、って聞いたらちょっとショックかも。

バービーで一番好きかも、この曲。

ポケットなんか 探ってちょっとコイン
2,3枚 ねだってなんかみる
電話するってアドレスも見ずに 
かまってくれそうもない ほら

女ぎつねOn the Run

近くまで来てるのよ 泊めてくれる?
いきなりで悪いけど帰れないの
ねぇ いいでしょ コインがないわ
詳しく話すから 着替えでも探してて

負けるもんか

しゃくりあげて わめいてもいんだ
殴りたけりゃ 今日が その最後のチャンス
言葉の通りだぜ

泣いたままでlisten to me
この曲は最初から最後まで痛いほど沁みる

松本隆先生が『木綿のハンカチーフ』や『外は白い雪の夜』で書いた70年代の男女の世界を
80年代終盤から90年代の男女で書いたのがイマサ。
松本先生の歌詞も女心を見事に捉えているけどイマサも同じく。

くやしいことだけを 悲しいことだけを 突然思い出す わけもなくただ わめきたい
たとえ今日の夜 やけをおこして死んでも 決して誰一人 気づくわけじゃないよ

chibi

女目線のこんな詩がなぜ書ける?

ギターのみならず、バービーのあの世界観も作っているという偉業。
「天才」という形容詞以外に当てはまるものがあります?
私には思いつかない。

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