着物の魅力に気づいたのは20歳のころ。
とある企業の企画でロンドンの街中で浴衣を着てストリートミュージシャンをやったとき。
着物と言いつつ、この時は着付けができなかったので、ひとまず簡単な文庫結びだけ覚えて浴衣一式をスーツケースに詰めてロンドンへ旅立ちました。
浴衣姿でバスに乗っているとたくさんの人に声をかけられた。
こんな風に外国の方にに好意的に褒めてもらえたことなどないので照れくさい気持ちもありつつ ちょっといい気分。
日本にいるとわからなかった着物の魅力をロンドンの人たちから教えてもらったのです。
そんな経験もあり着物には好印象を持ちつつ、気が向いたときや、お祭りのときに着たりする程度でしたが10年ほど前、本家の叔母から
「おばあちゃんの着物を整理するから欲しいなら取りにおいで」
とお呼びがかかりました。
これが本格的に着物に魅了され、さらには大学生になるきっかけにもなりました。
衣装ケース4つに詰め込んだ着物や帯を あらためて広げてみると絹の上質な手触りと文様の美しさに驚くばかり。
「これはお宝を手に入れたかもしれない…」
着物と帯のコーディネートで印象は千差万別、小物の合わせ方、利かせ方ひとつで粋にも無粋にもなるスリリングさ。
実におもしろい。
かけてもいない眼鏡をくいっと直して腕組みして脳内で幾通りものコーディネートを展開する。
こうして着物の世界に誘われて今に至ります。
着物を着るからには粋に着たいという思いから基礎的なルールなどを調べつつ、着崩れの研究のために着物姿で窓を拭き、たすきをかけて料理をする。
着姿が美しい人をひたすら見て真似る。
できる限りの策を講じたけれど、まだまだ手応えがない。
そんなときに現在学んでいる大学の存在を知って50歳の大学生になったのです。
能や歌舞伎、和歌や茶の湯などの和について、そして日本のみならず世界の美術や歴史について知ることで、着物の魅力を多面的に感じるようになりました。
「すこしでも着物の魅力を伝えられたら」
そう思って微力ながら発信していきたいと思っています。